突き詰めた極限を超える

こんにちは

経営者マーケティング研究所
代表の岡田有史(ゆうじ)です。

3月27日(水)に弊社の銀座経営者倶楽部でご講演いただく、
くず餅で有名な老舗の『船橋屋』さんの
渡辺雅司代表取締役社長のお話の2回目です。

船橋屋は、江戸時代に創業し、
214年続く伝統的なくず餅屋さんです。

その味は、親子何代にも亘るファンが大勢いて
高い評価を受け続けてきましたが、
8代目当主の渡辺雅司さんが、
2008年に代表取締役社長に就任されてから
大規模な経営改革を成功させています。

その結果、昨年はJR東日本が行う
「おみやげグランプリ2018」で
総合グランプリを受賞しています。

また、テレビ東京の人気経済番組、
『カンブリア宮殿』にも出演された他、
昨年だけでも100本以上のメディアで取り上げられており、
マスコミからも、経済界からも、もちろん和菓子ファンからも、
大きな注目を浴びている企業です。

そして私、岡田は長年に亘って、
船橋屋さんにコンサルタントとして
入らせていただいています。

経営コンサルタントの目から見ても、
今の船橋屋さんの状況は素晴らしいもので、
社員100人以下の規模の会社としては、
日本のトップ3に入るレベルだと感じています。

よくスポーツ選手などが絶好調で
信じがたいほどのパフォーマンスを発揮した際に、
「ゾーンに入った」と表現することがありますよね。
まさに今の船橋屋さんは、
ゾーンに入っているような状態だと思うのです。

素晴らしいくず餅を製造していて、
それを購入するお客様が幸せで、
働いている社員も幸せで、
新卒募集をすれば1万7千人もの応募が殺到する。

お客様が別のお客様を連れてきて、
社員が優秀な社員を連れてくる。
そんな理想的な正のスパイラルが発生して、
全てがいい方向に回っている。

単に圧倒的に儲かっているとか、
そういうだけの話ではなくて、
関係する人がみんな幸せになっていて、
その幸せが、さらなる幸せを呼び込んでいる。
まさに、企業として無敵の状態だと言えるでしょう。

何故、それほどまでの会社にすることができたのか。
渡辺社長が行った改革は多岐に亘りますが、
一番の基本になっているのは、
やはり210年間、一つのことしかやらなかったこと
ということなのだろうと思います。

8代目当主となる渡辺社長ですが、
これまでの210年間には、きっといろいろな誘惑とか、
迷いなどもあったと思うんですね。
菓子の種類をもっと増やすとか、
多角化して菓子以外の事業を始めるとか、
そういう誘惑がたくさんあったはずです。

それでも船橋屋さんは210年間ぶれずに、
ワンシングでくず餅だけを作り続けてきました。

とは言っても、ただ惰性で同じことを
やっているのではありません。
210年間、くず餅の品質を上げるための研究をしていて、
終わりのない改良を続けている。

私はコンサルタントとして、
全ての社員の方と面談をさせていただきましたが、
現代人の味覚の変化とか、時代の変化に合うように、
ほんの少しずつ、味も変えていると聞きました。

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この、一つのことを極限まで突き詰めていく姿勢が
企業としての大きな力になっているのだと思います。
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渡辺社長はよく、
「古くて新しい」とおっしゃいます。

伝統的なのに斬新。
レトロなのにおしゃれ。

本当に全社員が、くず餅を作るということに
一丸となって全精力を注ぎ込むことができた時に、
魂の宿った素晴らしい逸品が出来上がる。
くず餅一つで、世界と勝負できるような
ずば抜けた力を発揮するんです。

みなさまも、是非それを踏まえて、
船橋屋さんが作り上げた魂の逸品を
味わってみてください。
そして、自分の会社のワンシングとは何かを
あらためて考えてみてください。

会社を経営していると、どうしても、
何か新しいことをしないと時代に取り残されてしまう
ような気がしてしまいます。

そこをぐっとこらえて、基本に立ち返り、
自分の全力を注ぎこめる仕事とは何かを再発見して、
それを磨き上げて、魂を込めていくことができたなら、
面白いのではないかなと思います。

岡田有史