ビジネスで再現性を持たせる方法
こんにちは
経営者マーケティング研究所
代表の岡田有史(ゆうじ)です。
以前、NASAやディズニーから注文が殺到する
町工場を経営されている
HILLTOP株式会社の山本昌作さんに来ていただき
銀座経営者倶楽部でご講演していただきました。
話を聞いて面白いなと思ったことを改めてシェアさせて頂きます。
山本さんが昔、初めてマクドナルドに行き
ハンバーガーを買おうと並んでいた時、
レジカウンターから女の子がハンバーグを焼いているのが見えたそうです。
そのハンバーグを、どのくらいの圧力で
どのくらいの時間焼いて、
どのタイミングでひっくり返して、
というのを平気でやっている女の子をみて
「不思議だな~」と、思ったそうです。
これはきっとマクドナルドのマニュアルに書いてあるんだろう、
と思った山本さんは
マクドナルドで働いている女の子を見つけてはご飯に誘った、と。
「あれって、マクドナルドのマニュアルに書いてあるの?」
『全てのことがマニュアルに書いてるよ』
「ちょっと一回そのマニュアル見せてもらっていい?」
『そんなの持ってこれる訳ないじゃないですか!』
「じゃあわかった!ハンバーグを焼くところだけ
コピーしてもらえないかな?」
『ダメに決まってる!私たちも一回見せてもらったけど
マニュアルがどこに置いてあるかもわからないし
簡単に出せるようなものじゃ無い』
「だったら、自分がハンバーグを焼いているオペレーションを
ここで呟いてくれないかな?」
「うーん、それだったら良いけど…」
こういった調子で女の子に呟いて貰い、
それを急いでその場でメモしたそうです。
”マイナス18℃に冷凍された45.4グラムのミートパティを
200度の鉄板で20秒焼き、55秒でひっくり返し
1分45秒でパンに移す”
これを当時はみんながちゃんとやっていた。
そうすると”誰もが同じ品質”で焼けるのです。
このことを自分たちの”ものづくり”と考えて比較すると
変に職人になって自分の感性だなんだと言い
いつも同じものが作れていないくせに
「いいもの作ってるでしょ」
と言ってしまっていることがよくわかった、と。
自分たちもこうやってやればいいものを
どうやら人間の記憶に残すことが
正しいと思ってしまっている、と。
それ以来、
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人間の記憶には残さない、記録に残す。
常にデータを取り
どうやって作ったかのレシピ作りをさせる。
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この作業を行ったそうです。
ですが、そう簡単にはいかず
職人に「あなたの今やっていることを全てレシピに書いてくれ」
と言うと100%の確率で「嫌です」と返答があり
対立関係がしばらく続いたそうです。
山本さんは、父親と母親を退けて工場長になったので
いている職人や従業員にとっては
「こいついきなり変なことを言い出して気でも狂ったのではないか」
と思われていた、と。
今の時代、”〇〇の料理”と検索するだけで
塩は何g、砂糖は何g、醤油は何ccとすぐに出てきて
その通りにやると近いものが出来上がります。
これを残せ、ということです。
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人が欠けたときに誰かが代わりにできるようにしておくには
過去にやってきたことをデータで残しておく。
そうするとその通りにやるだけでいい。
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しばらくは全然馴染まず、嫌がられていたのですが
ある時段々わかってきた、と。
それが何かというと
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リピートオーダーで同じものが来た時。
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今まで彼らの記憶に頼っていたものが
ちゃんとレシピがあるので楽にできるようになったそうです。
人間は記憶を頼りながらまた同じものを作っていく。
このようなことって
世の中や身の回りをみてもごまんとあるはずです。
例えばエクセルで表を作成しようと思えば
過去にやった記憶を辿りながら作る。
でも隣にいる同僚も同じような表を既に作っている。
山本さん曰く「共有したらいいのに」と。
会社に人が集まるのなら、
集まった人たちで共有するものがないか考える。
それを行っていくことがとても大切だ、と仰っていました。
過去のメルマガでもお伝えしましたが
おいしいご飯を炊くには
「初めチョロチョロ中パッパ赤子が泣いても蓋取るな」
と言われているように
窯で炊くと人によって、その日の気温によって
お米が硬くなったり柔らかくなったりする。
だけど炊飯器をつかってご飯を炊くと
誰でも、いつでも、同じようにお米が炊けます。
山本さんの会社では、
「美味しいご飯の炊ける炊飯器を作って欲しい」
みたいなデータを全部プログラムに残しておく。
鉄工場でのモノの製作の職人になることを目指すことではなくて、
そのプログラムの完成度を上げることを目指しているそうです。
そしてそれは再注文のがあったら、
プログラム=レシピを設定するだけでいいので、
すぐに同じものを再現できる。
”シナリオを作りいつでも誰でも同じ環境を再現することができる”
ことが会社や組織の可能性を広げていくのです。
是非皆さんもビジネスの中で職人になりすぎていないか、
自分がいなくなっても誰かに任せられるレシピを用意出来ているか
考える1週間にしてみると面白いのではないかと思います。
岡田有史