インド料理店をインド人が経営してない理由

こんにちは

 

経営者マーケティング研究所

代表の岡田有史(ゆうじ)です。

 

先日、面白いニュース記事がありました。

 

どんなニュースかといいますと、

日本にあるインド料理屋さんを経営しているのは、

ほとんどがネパール人なんだ、というお話です。

 

何故そうなっているのかと言えば、

まず、ネパールの人というのは、

とても真面目で勤勉な国民性なのだそうです。

 

だからインド人の経営者が

日本でインド料理屋を経営しようとしたときに、

インド人の料理人とか従業員を雇うよりも、

真面目で働き者のネパール人を採用することが

多かったのだそうです。

 

インド人のインド料理屋で修行して、

経営を学んだネパール人たちは、

やがて独立して自分達で飲食店を

経営するようになっていくわけですが、

母国のネパール料理を出す店ではなく、

日本で人気の高いインド料理屋をやったわけです。

 

これがネパール人のインド料理屋が

日本で増えていく一つのきっかけとなりました。

ただ、これだけだと、インド料理屋の中には

ネパール人が経営している店も多い、

程度の話にしかならなかったでしょう。

 

インド料理屋のほとんどネをパール人が

経営しているという状況に至るためには

他にも理由があるんです。

 

まず、日本にあるインド料理屋の料理というのは、

厳密にいうとインドで実際に食べられているインド料理とは

結構違うものだということがあります。

要するに、日本人向けにアレンジされている

ということなんですね。

 

ところが、インド人がインド料理屋を経営したり、

インド人の料理人が調理した場合、

日本人向けにアレンジするということが

なかなか難しくなります。

 

インドで生まれ育ったインド人は、

生まれたときからインドの料理を

食べ続けて育ってきましたから、

インド料理に馴染みがあって愛着もあって、

当然ながら誇りも持っているわけです。

 

だから、どうせ料理屋をやるならば、

インドの本場の味を作りたくなってしまう。

自分達が本当に美味しいと思っている料理で、

日本で勝負したいと考えるわけです。

 

それが悪いというわけではありませんが、

本場の味は、大半の日本人にとっては、

辛すぎたり、味に馴染めなかったりしますから、

そういう本場の味で日本で成功することは、

なかなかハードルの高いものになります。

 

それがネパール人ならばどうでしょう。

元々インド料理にそこまで馴染みがない彼らは、

日本人向けにアレンジされたインド料理を

提供することに抵抗感がありません。

 

必要以上のこだわりがないから、

日本人の志向に合わせて柔軟に

アレンジすることができるわけです。

 

だから、ネパール人の経営するインド料理屋は

日本人に受け入れられやすく、

ビジネスとして成功しやすかった。

その結果として、日本にあるインド料理屋は、

大半がネパール人が経営している、

という状況になったわけです。

 

このニュースを見た私は、この事例は

インド料理屋だけに限った話ではなくて、

他でも似たような話があるな、と思いました。

 

私自身が海外に行ったり、

あるいは海外出張の多い経営者の方から

話を聞くことも多いのですが、

近年、アメリカや東南アジアなどで、

日本食を出すレストランが、

結構、流行っているのを見かけます。

 

そうしたレストランというのは、

実は台湾人とか韓国人が

経営していることが多いんです。

 

そして、我々日本人がその店に行ってみると、

正直なところ、あまり美味しいとは

思えないことが多いわけです。

 

例えば、寿司店に行ってみたら、

ガリの代わりにキムチが出てきたとか。

あるいは、明らかに中華料理のメニューが

まざっているとか。

 

我々日本人からしたら、こんな料理を

日本食として出して欲しくないな、

と思ってしまうわけです。

 

だけど、その店は流行っている。

その理由は、本来の正しい日本食という

ジャンルにこだわることなく、

現地の人たちが食べたいものを研究して、

そのニーズに合わせているから

流行るのだと思うんですね。

 

これが日本人の料理人だとしたら、

日本食の素晴らしさを世界に広めたいと思ってしまって、

お客様のニーズに合わせるということは

なかなかできないだろうと思います。

 

以前、ミシュラン寿司かすしざんまいかという内容で

メルマガを配信したときに、

多くの方から反響をいただきました。

 

大衆が望んでいるものはなんなのか。

名人が握る一貫1000円以上のトロなのか、

それとも、いい素材を使っているけど、

最低限の技術しか持っていない職人が握る

一貫300円のトロなのか。

 

飲食店経営をビジネスとして割り切るならば、

大衆が望んでいるものを提供することが

重要なんだ、というお話でした。

 

ネパール人が経営する日本のインド料理屋も、

台湾人や韓国人が経営する海外の日本食レストランも、

料理に対するこだわりがないからこそ、

ビジネスに徹して、

その国の大衆が望んでいるものを提供することができる。

だから成功しやすいわけです。

 

=======================

いま本当にニーズがあるものは何なのか、

何が一番売れるものなのかを追求する。

自分のこだわりとか私心のようなものを捨てて、

100%のエネルギーで大衆が求めているものを

見つけることにエネルギーをつぎ込めるかどうか。

これが、本当に大事なんだと思います。

=======================

 

もちろん、その真逆の発想が、

ビジネスの世界ではダメなんだ、

というわけではありません。

名人芸を追求した超高級寿司店の路線も

突き詰めていけばビジネスになるはずです。

 

市場のニーズに合わせるのではなくて、

圧倒的な開発力で市場に新たなニーズを作り出すような

ビジネスを成功させたのが、

アップルのスティーブ・ジョブズなんだ、

とも言えるかもしれませんね。

 

日本のインド料理屋にしても、

インドの一流レストランのような、

日本人向けにアレンジしていないメニューで、

コアなインド料理ファンを魅了して

大成功しているお店もあるでしょう。

 

海外で日本料理の神髄のような、

超一流の和食店のような料理を出して、

日本通のセレブの支持を得ているお店も

間違いなくあります。

 

だから、大衆のニーズに合わせることが

ビジネスでは唯一無二の正解なんだ、

というつもりはありませんが、

重要なことは、中途半端なことを

しないということなのだと思います。

 

大衆の好みに合わせるのならば、

へたなプライドや固定観念は一切捨てて、

ゼロベースで顧客目線で考えてみる。

 

自分の常識ではありえないようなものでも、

それをお客様が望むのであれば、

それが答えなのかもしれない。

そういう謙虚な気持ちでビジネスを

とことん追求できるかどうか。

 

日本のインド料理店のほとんどは

ネパール人が経営しているという事実から、

こだわりを捨てる経営ということを

いま一度考えてみてはいかがでしょうか。

 

岡田有史