釣った魚にこそ餌をやろう
こんにちは
経営者マーケティング研究所
代表の岡田有史(ゆうじ)です。
企業にとって、優秀な社員というのは
宝のようなものですよね。
特にベンチャー企業など、
少数精鋭で回している会社では、
一人の優秀な社員がいるだけで
売上が何倍になることも
珍しいことではありません。
だから経営者は、優秀な人を引き入れるために
懸命に努力する方が多いわけです。
それこそ全力で、三顧の礼で口説き落としたり、
条件面でも相手の希望を出来る限りかなえたり。
それだけでなく、
会社のビジョンを相手に伝えて、
そのビジョンを共有して一緒にやっていこう、
みたいな感じで口説くこともあるでしょう。
条件面で折り合いがついただけで入った人は、
他にもっといい条件があれば
簡単に出て行ってしまうかもしれません。
でも、ビジョンを伝えて共感してくれた人ならば、
そんなに簡単には辞めないでしょう。
だけど、それだけで
安心していいのでしょうか。
日本では伝統的に、
「釣った魚に餌はやらない」
という言葉があります。
簡単に言いますと、
「親しくなった相手には、
機嫌を取るようなことはしない」
という意味です。
これを悪い解釈にとらえると、
「釣ってしまえばこっちのものだから、
もう餌をやる必要はない」
という、非常に薄情で悪徳な感じになります。
このメルマガを読んでいただいている経営者の方は、
こういうタイプの方はまずいないでしょう。
では、いい方向に解釈するとどうなるか。
「親しくなったら暗黙の了解で
わかってくれているはずだから、
餌を撒くような真似はしない」
こうなるわけです。
相手を信頼しているからこそ、
餌を撒く、機嫌を取るようなことは
あえてしないんだと。
これ、日本的な精神論の一つだと思うのですが、
経営者の方を見ていますと、
このタイプの方は結構多いように見えます。
俺はあいつのことを信頼しているし、
そのことは普段一緒に仕事をしていれば
伝わっているはずだと。
信頼しているから仕事も任せているし、
結果にも満足しているから、
評価もちゃんとしているんだと。
ですが、今の時代は、
そういう暗黙の了解的な考え方では
なかなか通用しなくなってきています。
例えばこれは、入社の時に、
黙って俺についてこいと社長が言って、
それだけでついてきてくれた人なら
いいかもしれません。
でも、三顧の礼で迎え入れて、
条件面も調整して、
事業や将来のビジョンを語って聞かせて
それで入社した人に対しては、
入社したあとに放置するのは危険だと
思うのです。
自分は、社員のことを信頼している。
言わなくても伝わっていると思っている。
でも、実際は伝わっていない、
ということがよくあるんですね。
もちろん、まったく伝わっていない
というわけではなくて、
社長は自分のことを信頼してくれているはずだ、
ぐらいのことは感じているかもしれません。
だけども、仕事をしていると、
いろんなことがあって、
なかには不満や不安に思うこともあるわけです。
そういったことが積み重なっていくと、
お互いの信頼関係には簡単に
ヒビが入ってしまうものです。
そういう目に見えない不満や不安を
暗黙の了解の信頼関係だけで維持することは、
なかなか難しい。
やっぱり、口に出して伝えないと
伝わらないこともたくさんあるんです。
それを怠っていると、
ある日突然、社員が辞めてしまいます。
それでも、辞めるときに
不満や不安を口にしてくれれば、
その反省を次の機会に生かせるかもしれません。
でも、ほとんどの人は不満は口にせず、
何かもっともらしい理由を言います。
例えば、健康上の理由とか、
親の介護がとか、旦那が転勤でとか…
これが日本人的な謙虚さだとは思いますが、
それだけに経営者は、辞めた本当の理由に
気が付かないことも多いんですね。
ああ、そういうことなら仕方がない、
タイミングが悪かったんだと、
自分を納得させている経営者が多いわけです。
だけど、本当に信頼関係が構築されていたら、
突然辞めるなんて言わないはずなんです。
自分の事情をまずは相談する。
例えばしばらく時短勤務にするとか、
1、2年ぐらい仕事を離れるけど、
また戻って来たいとか、
なんとかして、この会社に残りたい、
戻りたい、ということになるはずです。
それが、どんな理由であっても、
いきなり辞めると言い出すのは、
やはり不満や不安が内心にあって、
もう会社に未練がなくなっているから
だと思うんですね。
だから、信頼していた社員に
突然辞められてしまった経験がある方は、
やっぱり、「釣った魚に餌をやる」
(あえてこの直球的な言葉を使っています^^)
ということを考えてみるべきだと思うんです。
言わなくてもわかってくれてるはず、
ではダメなんです。
ちゃんと伝えないといけない。
自分はあなたと信頼しているよ、
評価しているよ、大切に思っているよ、
ということは、ちゃんと言葉にして
相手に伝えることが必要なんです。
「信頼」という言葉は、
「信じる」ことと、「頼む」ことです。
貴方を信じているから頼むんだ、
ということを伝えることが大事です。
そして、同時に頼む理由も伝えること。
スティーブ・ジョブズのプレゼンで
whatだけではなく、whyを語っている
と言うエピソードをよくこのメルマガでも紹介していますが、
why=何故なのか、その理由
を伝えると
相手は納得しやすいんです。
例えば、混雑したトイレに並んでいるときに
横入りされたら、誰もが怒りますよね。
だけど、腸が弱くて、突然の腹痛で
もう限界なんです、譲ってくれませんか、
と理由を説明されたら、
しょうがいないな、と譲る人もいるでしょう。
よく聞いたら大した理由でもないけれど、
それぐらい、人は理由というものに弱い。
だから、仕事を頼むときも、
理由をちゃんと説明することが大事です。
このプロジェクトのカギは、
○○部門との緻密な連携なんだ、と。
それができるのは、○○部門に顔が利く
君だけなんだ、だから頼むよ、
という感じで、理由を語ってやれば、
頼まれたほうは何倍もやりがいを感じるし、
何か不満があっても、辛抱できるんです。
さらに、いつも面倒かけてすまないね、
本当に助かってるよ、
ということも伝えて行けば、
本当の信頼関係が構築できるのだと思います。
この伝えるということは、
本当は凄く当たり前のことなんだけれども、
相手がわかってくれているはず
という思い込みがあることで、
どうしても忘れてしまいがちです。
だから、釣った魚に餌をやる、
ということをルーティンワークに
してしまうというのもいいと思います。
例えば月・木で会議を設定して、
そこでみんなを数字で詰めるんじゃなくて、
一人一人をよく見て、
大事なことを伝えていく場にする。
今日の会議では、あの仕事を彼に頼もう。
その理由も語って聞かせよう。
次の会議では、あのプロジェクトの成功を
ねぎらって、お礼を言おう。
こんな感じで、ルーティン化された中で、
毎回伝えるべきことを考えて、
伝えて、周りにもシェアしていく。
そうやって誰かと信頼関係を築くところを
見せていけば、他の社員にもきっと好影響が
出てくると思います。
釣った魚に【こそ】餌をやる、
ルーティン化して伝えていくこと、
みなさんも是非やってもらえたらと思います。
岡田有史